随分前のことです。相模屋美術店を退社（1982）するにあたり、お客様や絵描きさんなどに、挨拶まわりをしていました。

佐藤先生もお付き合いがありましたのでご挨拶にと思いお電話もせず、お伺いいたしました。その時は運よく先生がご在宅で、訪問の主旨をお伝えすると「どうぞお上がりください」とおっしゃっていただきました。

内心びっくりしました。というのも、いつもは玄関口で短く要件などのお話や、作品を頂くくらいでお宅に上げていただくことは一度もなかったのです。初めてゆっくり打ち解けてお話が出来ました。先生は岩手の人で東北人らしく朴訥で大人しい感じのひとでした。丁寧に優しい言葉をかけて頂き、門出を祝って頂きました。帰り際に、応接間の棚に置かれていたウィスキーを少し照れながら渡していただきました。

なんてやさしい方なのだろう。相模屋美術店という看板もなくなったものを通常以上の扱いをしていただいて、とても嬉しく勇気が湧いてきたこと忘れることができません。

（残念ながら作品の画像がありません）

佐藤圀夫（1922-2006）

岩手県生まれ

1946　 東京美術学校（東京芸大）日本画科首席卒業

　　　　山口蓬春師事

1970　名古屋芸術大学教授　（～1997名誉教授）

1989　日展理事

1999　日本芸術院会員