まさに積日、河原町通りの村田さんで個展をさせていただいてから、早いもので三十年が経ちました。さまざまな事柄が起こっては過ぎ去り、世界は良くなったのか悪くなったのか、全く見当もつきません。そんな時間の流れのなかで、相も変わらず、拙い絵を描き続けていることには、われながら少々あきれています。コロナ禍までの十年間に七度ほどパリに滞在しました。今となっては、もう二度と行けないのではないかと半ば諦めつつ、変わらないようで、年毎に、目まぐるしく変わるパリの街景を懐かしく思い出しながら、 今回の出品作を描いてみました。ご高覧いただければ幸いです。 林 哲夫
「初心」
日本画という画材に触れて長い年月が経った。
経験を重ねて来たつもりであるが熟練したという
感覚はなく制作する度に感じるのは初心である。
絵を描くということが、そういうことなのか、なかなか
完成には近づけさせてはくれない。しかし、此の度も
完熟された画材と不思議な力に助けられて
ようやく一点一点が完成した。暫の安堵を感じている。
また、新たな初心が始まる予感も。 北條正庸