二人は日展を主な発表の場としています。辻野さんは京都の画塾である晨鳥社に、森さんは青塔社にそれぞれ属しており、風景画を得意としています。
辻野さんの作品からは緩やかな時間の流れが伝わってくる。また、写生の場所を選ぶことに優れていて、居場所と対象との距離感が心地良く感じます。どの作品からも穏やかな優しさを感じます。
森さんの作品は、対象とふれあい身を置いて納得してから制作しているように見えます。多様な草木の蝕感や光を色彩でうまく表現しています。細やかさと大胆さとがほどよく、魅力的です。
《写生について》
何が描きたいと思わせるのか、出会いはたいがい突然である。
見た瞬間に頭の中で描いている。
山とか日常から離れた空間に身を置くと、
感覚がより新鮮で敏感になる。
普段見慣れた空間でも新しい見方や見え方をするとワクワクする。
この出会いからストーリーを紡いでいく。
できるだけ実感のあるように描きたい。
目に見えるだけではない。鼻も耳も
頭の後ろにも風景を感じるようにしている。
時間が教えてくれることも多い。
なぜか木の風景に惹かれることが多い。
何も主張しないけどいつも存在していて。
面白い形をしていて、きれいな色していて。
いつも同じで、同じではない。
いろんな意味を考えたりするけど、意味はあるんだろうか。
ただそこに存在していて
すごいなと思う。
そんな自然な?感じで表現できればどんなに素敵だろうと思う。
辻野宗一
《写生や制作について》
この3年間の多くは、洛北の自然を歩き、
対象をみつめ、そのかたちを足がかりにして、
感じたその場の
質感・温度・湿度・空気の色や厚みを写生しました。
京都の自然が私の中に積み重なってくれました。
そして、
自然のもつさまざまな相貌に思いをいたし、
会話をするように、
日本画画材の魅力的な力を借りながら、
感じたありようを作品として象(かたど)るべく
制作に臨んでいます。
森 桃子